2010/11/21 (Sun) 『「死ぬ瞬間」と死後の生』著：エリザベス キューブラー・ロス

エリザベス キューブラー・ロスの本、お勧め第二弾はこれ。



彼女の世界各国での講演を１册の本にまとめたものです。

語り口が軽妙で非常に読みやすい本だと感じましたが、まずはお勧め第一弾で取り上げた『死ぬ瞬間―死とその過程について』を読んでからのほうがより理解が深まるのではないかと思います。

エリザベスの一連の本を読んでいる時に思ったことをちょこっと書いてみます。
私は今までの人生の中で２度『死ぬ瞬間』に立ち会いました。
初めは愛犬、２度目は父の死の瞬間です。
いずれも自宅での出来事でした。
今回ご紹介した本の中に書かれていたかは定かではありませんが、エリザベスはその著書の中で、いわゆる死体は単なる物体であり蝶が飛び立ってしまった後の『さなぎ（または繭）』の抜け殻のようなものだ、というような事を言っています。
それは死の瞬間に立ち会った私も実感しています。
息をしていた時と、息を引き取った後では明らかに何かが違うんですよね（息をしている／していないという以前の問題として）。
亡骸は亡骸で、何と言えばいいのかな、亡くなる前と同じ物体の筈なのですが明らかに何かが違うんですよね。息を引き取った直後などはまだ当然触れば暖かいのですが決定的に、何かが違うんです。
最期の息を吐ききった瞬間、同時に肉体からその人の本質である何かが旅立っちゃったと言うか、何というか・・・。
これは体験したからこそ言える話なんですけどね。

エリザベスはよく『蝶』と『さなぎ（または繭）』の例えをするのですが、これって凄いな、と思いました。
周囲の人に対して反応が出来ない位になっている瀕死の人に対する例えが羽化する直前の『さなぎ（または繭）』だという表現は、子供にとっても非常にリアルでわかりやすい表現ではないかと思います（とはいえ今の時代だとキチンとイモムシの時代から蝶を育てたことのある子供でないと理解しにくい表現になっているのかもしれないな〜・・・、とも思いましたが・・・）。
『死』の瞬間、その人の本質は肉体という『さなぎ（または繭）』を抜け出て私たちには見ることの出来ない次元に蝶となって羽ばたいていくというその比喩を読んだ時、愛犬と父の臨終の瞬間に立ち会っていた私がず〜っと引っかかっていた「何かが違う」という気持ちに対して「そうなんだ！」とスッキリ納得出来たというか、何というか（今回、『何というか』という表現がやたらに多いな・・・。でもホント、この感覚は表現出来ないんですよね・・・）。

一連のエリザベスの本を読んで改めて父の死について考えさせられました。
多分、読み手によって色々な感想が出てくるかと思います。

愛犬も父も長年親しんだ自宅で息を引き取ることが出来たのは、母や妹の手厚い看護があってこそでした。
今の時代、なかなか自宅のベッドで家族全員に手を握られて息を引き取るなんて事は出来ないんじゃないのかなぁ・・・、と改めて思った次第です（特に父は本当に本当に幸せ者だと今でも思っています）。
父が亡くなってから数年は母と妹と三人で父の話をするたびに涙が溢れて止まらない状態が続きましたが、号泣しながらも延々と父についての話をしていた記憶があります。泣きながも延々と父の話をするということが出来たことも遺された私たちにとっては幸せな事だったんだな・・・、と改めて感じたりもしました。
・・・どうやら来年で父が亡くなって10年になるみたいなんですけどね。もう10年にもなるのか！　とも思いますし、あの瞬間から今までの間が一瞬のような気もしますし・・・、時間ってあんまり関係ないですよね。とはいえ時間と共に父の話をするのに涙が出てくる事も少なくなってきたのは確かです。